家族信託とは、
信頼できる第三者(この場合は家族)に自身の財産やその管理を託すこと、です。
似たような制度に、成年後見制度があります。
成年後見制度との違いは、財産を所有する本人の意思が反映できること。そして、不動産の売却や建て替えのような多額の決済を伴う場合、成年後見制度だと家庭裁判所の許可を得る必要があります。
しかし、家族信託では、そういった手間はありません。
家族信託の手続きの前に、
まずは、家族間で話し合いをする必要があります。
家族信託は、家族間での契約。
なので、契約した後でゴタゴタがあると、身内内の契約だけに面倒なことになります。手続きする前に、家族間でしっかりと話し合いをすることで、後々のトラブルを避けることができます。
家族信託で決めておくのは、
・誰を受託者にするか(誰に財産の管理や運用、処分を任せるか)
・誰を受益者にするか(財産の運用や処分によって生じた利益を誰に与えるか)
・受託者管理人を決めておくどうか
・(委託者兼)受益者が亡くなったあとの受益権は誰に移すか
・受託者が亡くなったら、どうするか
以上の項目になります。
家族信託は長期にわたるものなので、家族信託の目的、将来の財産のゆくえをしっかりと話し合っておくと、安心です。
では、家族信託の手続き方法です。
まず用意しておく書類は、
・本人確認資料
(運転免許証やマイナンバーカードなど)
・受託者と受益者の印鑑証明書
(信託契約書は公正証書での作成が一般的。公証役場で、受託者と受益者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)を用意しましょう。)
・受託者と受益者の実印
・信託する財産に関する資料
(土地や建物といった不動産を家族信託の対象にするのであれば、不動産の「登記事項証明書(登記簿謄本)」が必要です。また、その際、不動産の価格を証明するための、「固定資産税評価証明書」や「固定資産税課税明細書」も準備しておくといいですね。)
・戸籍
(家族関係を証明できる戸籍謄抄本が必要になります。)
信託する財産が不動産である場合、不動産登記の手続きが必要です。
不動産の名義を委託者から受託者への変更する必要がありますので。
そのために、必要になる種類は以下の通りです。
・発行から3カ月以内の委託者の印鑑証明書
・登記済証または登記識別情報
・委託者の実印
・運転免許証などの委託者と受託者の本人確認資料
・受託者の住民票
・受託者の認印
ただ、状況によっては、これ以外の書類が必要になるかもしれません。
その際は、登記を依頼した司法書士などの指示に従ってください。
では、いよいよ契約書の作成です。
契約書の作成は家族間だけで行うと漏れやミスがある可能性があるので、
司法書士のような専門家に依頼するほうが間違いがないですね。
その上で、作成した契約書を公証役場で公正証書にします。公正証書にすることは必須ではありません。ですが、委託者の意思であることうを公的に証明でき、後々トラブルになることを避ける意味でも、公正証書にしておくほうが無難です。
そして、委託者の財産の名義を受託者に移します。
不動産である場合、所有権を委託者から受託者に移転する信託登記を法務局に申請する必要があります。また、信託目録という信託財産を一覧にした記録の作成も必須です。
現金や預貯金の場合、専用の口座を開設する必要があります。
その専用口座の中で、信託財産を管理していきます。
ところで、家族信託には時効があります。
「30年ルール」ともいわれているのですが、家族信託は「信託開始から30年経過後に受益者となった人が死亡すると、信託は終了する」ルールがあります。家族信託は永遠ではないのです。
家族信託を司法書士などに依頼せず、家族間で手続きしたい。
そういう方もいると思います。
家族信託を司法書士などに依頼する場合の費用は、およそ50万円~100万円です。
個々の相場は以下の通りです。
家族信託を専門家(司法書士、弁護士など)に依頼した場合の費用相場
・相談、コンサルティング料 30~80万円
ただし、この費用相場は信託財産の価格によって換わります。例えば、1億円以下の信託財産なら価格の1%、1億円超で3億円以下なら価格の0.5%というふうになっています。
・公正証書作成費用 10~15万円
・公正証書作成手数料 3~10万円
ただし、契約の内容や信託財産額に応じて費用が上下します。
・登録免許税(信託財産に不動産が含まれている場合)
不動産価格の1000分の4に相当する額を法務局へ税金として納めなければなりません。
これらに加えて、専門家に信託の登記を依頼した場合は、別途報酬がかかるのが一般的。費用相場は専門家ごとに異なりますが、最低でも10万円~15万円はかかるようです。
家族信託を行った場合、税金が発生します。
まず、財産を信託することで利益が発生する場合、(収益マンションを信託した場合などですね)、贈与税が発生します。
また、家族信託の段階では贈与税はありませんが、委託者が死亡した段階で相続税が発生します。そして、不動産が信託財産である場合、登録免許税や固定資産税を支払う必要があります。
ちなみに、登録免許税は、不動産の課税価格の1000分の4にあたる額になります。
家族信託は、成年後見制度と比較すると扱いやすい部分もあります。しかし、手続きは正直いって面倒です。かといって、財産の問題は放置しておいても解決することではありません。ですので、専門家の助けを得つつ、早めに手続きをしておくほうがよさそうです。